One Row Accordion - inside -

 ある日、高い方から二番目のボタンの「押し」の音が痩せている気がした。 1オクターブ下の5番目のボタンに人差し指をとられているのでこのボタンは小指で押さえている。 初めは「まだ俺も小指の力が弱いな」と思っていたんだけど、どうやら違う。このアコーディオンは 1音に対して4つのリード(音程が1オクターブ×1,2オクターブ×2,3オクターブ×1)が同時に鳴る。 それらは上部に付いてる4つのストップで開閉可能なので1リードずつ鳴らしてみた。すると一番高い 音程のリードが鳴ってない!

 中を開けて自分で修理するのにはかなり抵抗があった。失敗して壊れたら元も子もない。 直してくれるLarry氏とは昨年面識が出来たとはいえ遥か彼方の南西ルイジアナ。しかし幸運なことに 先日、日本でもLarry氏、Marc Savoy氏、Martin氏の1ロー・アコーディオンを数台所有している 湯浅さん宅にお邪魔する機会があり、色々教えてもらった。

 やはり自分の楽器はある程度自分でも直せないとねえ、、、、。


 まずコード・ベース左手側から開けてみる。上下二箇所の木ネジを外す。
この部分には、とくに接着剤などは使われていない。

 コード・ベース左手側の蓋を外すと向こう側のリードと内蔵マイクが見える。

 ボディ側の蓋との接地面にはウレタンのような黒の樹脂が接着されている。
メモ書き「BF」とは注文したキーのBフラットという意味だろうか?

 コード・ベース左手側の蓋
コードボタン、ベースボタンに対応して3つずつのリードが並ぶ。

 内蔵マイクは太い針金で固定されている。結構、蛇腹にギリギリ触れない位置。 また、この向きなのでメロディ側、コード・ベース側の音を均等に拾ってくれるのか?

 次にメロディー右側の蓋を外す。左側同様に上下に木ネジがひとつずつ。

 右側、完全に蛇腹ボディ部も外した状態。
4つのストップの単純な構造が見える。ストップからはその列のリードの開閉を行なう 物差し定規のような板に直結している。 これはたしかにLarryさんが言っていた 「あまりストップの上げ下げはしないように」というのは判る。ようするに木材同士の 抵抗のみで上げた状態を保っているのだから摩擦によって緩くなっていくのだろう。 しかし、そういうことであれば簡単に直せそう。

 左側のように皮の弁が付いてるパターンと右側のように付いていないパターンがある。 その違いはある程度大きく(音程が低い)なると皮で補強してちょっとの空気の流れで 鳴ってしまわないようにしているようだ。
右側の皮なしの方が今回「押し」の際に音が出なかったボタンのリード台(とりあえずそう呼ぶ)で その中に縦のリード溝が2つ並ぶ。左のこちらがわからリベットで留めてあるのが問題の 鳴らない「押し」リード。普通ならフっと息を吹きかけるとなるのだが、たしかに鳴らない。 そっと撫でるように触ってみる。リード台からちょっと浮いてるはずのリードがくっついて しまっているようだった。しかし、しばらくさすっているうちにリードが浮いた。 きっと湿気やホコリなどでくっついてしまっていたのだろう。息を吹きかけると、めでたく 鳴ってくれました。修理完了。

 開けたついでに内蔵マイク観察。 真中に縦に合わさって入っている2つのリードに針金とビニールテープで固定されている。 これはテープの粘着性が渇いてしまったら、いつか取れちゃいそう。

 いたって単純に外部接続ジャックに配線されている。ただし、密室性が無いと空気が蛇腹から 抜けてしまうので外部接続ジャックとボディの間にはかなりのロウのような樹脂で覆われている。 ジャック自体も見たこと無い筒状のもの。

 マイク部品の型番「E352」という文字が見える。「E352」はマイクロフォン自体の型番では ないようだ。(ネットで調べても出てこなかった)

※判明しました(2004.6.8)
SHUREの565,PE56,566,PE566というボーカルマイク用のマイクでした。

 単純に普通のマイクロフォンを分解し、普通なら柄の部分に収まっている基盤もいっしょに ビニールテープで押さえつけているだけのようだ。これならマイクが壊れても手近なマイクを 同様に代用することが出来そう。

 ということで、無事修理完了。ついでに内蔵マイクやストップの構造も判って、もうこのへんが 調子悪くなっても何とかなりそうなのでさらに安心。もっと激しく弾かせてもらいます。 (2004.1.20)