Louisiana Folk Roots
Spring 2004 Dewey Balfa Cajun and Creole Heritage Weekend
(at Lake Fausse Pointe State Park 2004/4/2 - 5)


4月3日(土) ※二日目

 朝、今日も良い天気で、キャビンの回りはとても美しい。
同室のフィドラーさん達は、とっくに起きて、ポーチでフィドルを弾いてた。 私はカメラを持って、朝の風景を撮る。

 同じキャビンの夫婦の奥さんにきくと、今回はどれでも、自分の取りたいクラスに勝手に行くだけだそう。 クラス初日の朝に、どのクラスを取れるか振り分けがあると聞いていたのだが、それもないらしい。

 キャビンでアイスカフェオーレとシリアル食べたけど、朝ご飯の様子を覗きに Conference Center に行く。 Al Berard がいたので、横に座って、子供の事とか、少し世間話。 彼は毎年 San Antonio の近くのケイジャン・フェスに来るので、うちの息子も知っているのだ。


 午前9時になった。
いよいよクラスが始まる。 Jimmy Breaux のビギナー・アコーディオン・クラスがあるパビリオン1に行く。 皆もう来ていて、Jimmy 先生に手を振って挨拶。

 座って、おもむろに紫のアコーディオンを取り出すと・・・皆から「おっ」という反応。

 一年前にこのアコーディオンを入手したとはいえ、まだ殆ど初心者の私である、ついていけるかなーと心配してたが ・・・・ J’ai Passe Devant Ta Porte のワルツを、単音で弾いていくだけだった。

 教則本に載ってる曲なので、ちょっと拍子抜けしてたが、Jimmy は低い音はあまり使わなくて、メロディの途中で低くなると、オクターブを上げて弾く。(勿論単音) つまり、ひとつのメロディで、オクターブが上がったり下がったりする訳。 Jimmy は中音域( 4 ボタンめから 8 ボタン目くらい)の音を多様している。 メロディがそれより低くなると、オクターブを上げる感じ。 そう言えば、ライブでもそういう弾き方やなあ、確かに。

 一通り練習したあと、Jimmy がひとりずつ回って聞いて行く。 私には、5ボタン目までは、出来る限り人差し指で弾くようにする事、それを徹底した方が後々楽に弾けるようになると。 そうか、そう言えばプロの彼でも、いつもそのポジションに手を置いてるな。 こういう(教則本に書いてある)簡単な事でも、実際本人に聞くと納得出来るし、忘れない。

 パビリオンは湖のほとり、水の上に建ててあるのだけど、ひょこっと水の方を見ると、お、アリゲーターが丸太の上 で日向ぼっこしてる。 おまけに、何故か蜂がぶんぶん飛んでる。 それも、小型のセミくらいある、でっかいやつ。 それがまた、攻撃にくるのだーーー! Jimmy も弾いてる最中に攻撃されていた。
「これは刺さないよ」と誰かが言ったし、実際誰も刺されなかったけど体当たりしてくるのだ。 やはりぎょえっ!となりますよ、そらぁ。 パビリオンの何処かに巣が有るのだと思うけど、皆のアコーディオンの音で怒らせたのかもしれない。

 アコーディオン上級やフィドルのクラスも、各パビリオンで行われていて、遠目に見えるのもあるけど音が聞こえ るほどは近くない。

 参加者のアコーディオンは、やはり Acadian( Marc Savoy )、Martin( Jr.Martin )と、 私のアコーディオン・ビルダーである Larry Miller の Bon( Tee )Cajun が多いが、 自分で作ったのを弾いてる人もいた。 一人、ストップが 2 つなのに、リードが 4 つ入った変わったのを弾いてる人が居た。 カナダから来た人で、かの地で購入したという。

 私の後ろで Acadian 弾いてる兄ちゃん、どっかで見た事あるなあ、と思っていた。 キャンプの参加者は全員名札を首からかけている。 それを見ると Matthew Doucet とあるので、Michael Doucet の息子だと気づいた。 2年前に Festivals Acadiens の時、 ステージで一曲セカンド・フィドルを弾いてる兄ちゃんが居たけど、あれが彼だったのか。 それ以外にも、あちこちで何回か見ていると思う。 で、Matthw はアコーディオンを弾いているのだが、全く初心者みたいに弾くので「もしかして、初めて弾くんですかぁ?」 と冗談交じりに聞いてみたら、そうだと言う。 何の根拠もないが弾けそうなもんだと思っていたので、意外。( 父の Michael は少し弾く ) スケールも知らなかったので教えてあげる。

 Larry Miller 氏が、何かの用事でパビリオンに来られた。 今回も来られてるのね。 ブース出されるそうなので、後で寄ります、と挨拶。

 午前中はずっと、練習。
しかし、合間にちょっと、私が単音なら何とか弾けるし、オクターブまではいってるけど、そのあとのブレンド(和音)が なかなかどうやれば良いか解らないと説明。

Jimmy 「何か弾いてみて」

と言われたので、本人の前でかなり躊躇したが、 ちょこっとコピーした Pierrot Grouillette & Madamoiselle Josette(Looking Back Tomorrow Live 収録)を単音で弾く。

Jimmy 「違う曲に聞えるな」
Atsuko 「あはは、ちゃんとコピーしてないんです」白状する。

そのあと彼が弾いてるのをやってくれた。 そうかー、やっぱりフィドルとかギターとか入ってないと良く解って嬉しいな。

 そのあとも、ずっと課題曲の練習だが、Jimmy は予定の休憩も取らず、ずっと皆の面倒を見ていた。 オクターブ弾きのあとはどうやれば良いのか聞くと、それはもうこんな風にやるんや、と弾いて見せてくれた。 簡単そうに見えるけど、実際弾いてみると「そうは行くかい」なのである、ははは。
b

 皆が一通り弾いた後、質問がありますか?というので、何人か質問していた。 私は「あなたの初めてのアコーディオンの先生は誰でしたか?」と聞いてみると、義父の U.J.Meaux(モー)だとか。 Jimmy の実のお父さん Preston はプロのギタリストだったが、Jimmy が 9 ヶ月の赤ちゃんの時に亡くなっている。 その後、お母さんが再婚したのが Walter Mouton(ムートン)のバンドの長年のフィドラー、U.J.Meaux なのだ。 ( Walter はアコーディオン弾き、Scott Playboys というバンドを率いる ) 今回聞いた所によると、U.J.はフィドル以外にも色々な楽器が出来て、アコーディオンも弾くらしい。 Jimmy はまず始めに、シングル・レコードを聴きまくったとか。 そうやって音を取って弾いてたら、U.J.が「その音は違うぞ」とか指摘しに来るので、 「うるさいなあ、もう」と思ってたとか(笑)。

 アコーディオンのキーについての質問で、ケイジャン・アコーディオンで C の次にポピュラーなのは何か?について は「それは D やね」と確信を持って。 Jimmy 自身、一番好きなキーは D なのだそう。 楽器が勝手に鳴ってくれるような感じなのだとか。 実際、BeauSoleil でも、かなり D を多用している。 Michael Doucet の声のキーに合っているのも理由だけど。

 クラスが終わった後、他の生徒さんと雑談したり、アコーディオンを交換して弾いてみたりした。 こういうのも楽しい。

 昼 12 時になったので、皆、Conference Center に昼ご飯を食べに行く。 この建物は沢山の柱の上に立っているのだけど、下は網戸が張り巡らされていて、そこでもレクチャーをしているら しい。 レクチャーは終わったようだったけど、カズコさんが見えたので中に入ると、David Greely( Steve Riley のフィドラー)がいた。 彼がレクチャーするとは知らんかったぞ。

David 「アツコー」
Atsuko 「あー、日曜に( Steve Riley が )Austin 行くでしょ、けど、私こっちに居るから行けないの」
David 「ああ、そうやねえ、けど、なんかそれ、おかしいね」
Atsuko 「Sam( Broussard )にもそう言って、よろしくお伝え下さい」


 そのすぐ前で、Larry Miller さんがブースを出していたので、見に行く。 すると、去年の 11 月にも会ったカナダからのカップルが来ていた。

Atsuko 「あー、また来られたんですか?」
奥さん 「来たんでなくて、ずっと居るのよ、一番寒い時だけカリブ方面に行ってたけど」

 このカップル、引退した後、キャンピングカーでずっとルイジアナのあちこちを回ったりしておられて、San Antonio にも 一緒に来られたり、Larry さんの所にいつもおられてお手伝いしてはるみたいです。 ダンナさんが、奥さんにアコーディオンを作ったと見せてくれる。(勿論 Larry さんの監視の元だろうけど)  9 ボタンので、弾かせてもらった。


 2 階に上がって、キッチンの列に並んで料理をとる。 パン、ハム、チーズ、スープとか、野菜、ポテトサラダが並んでいる。 ターキー・サンドイッチを作って食べる。

 アコーディオン・クラスで同じだったカナダさんは、ルイジアナ製のアコーディオンを買いたいそうなので、 Larry Miller ブースが下に出てますよ、と言うと、すぐに見に行かれた。

 このあたりでやっと、Michael Doucet が食堂に来たので挨拶する。 Michael は食べおわって、発泡スチロールのお皿をごみ箱に捨てに行ったのだが、ごみ箱が一杯なのを見ると、や おらごみ袋を引っ張り出して、ゴミをゆすって全部中に入れて、口をくくって、捨てに行った。 新しいごみ袋を持ってきて、ちゃんとごみ箱につける。 いやー、彼くらいの人になるとなかなかしませんで、こういう事は。 大袈裟やけど、彼が BeauSoleil のリーダーとして、あれだけ長い事同じメンバーで活動している理由の一つを見たような気がした。 皆で同じ釜の飯を食べる、こういうイベントでは色々なミュージシャンの普段見られない面も見られて面白い。


 その頃、Cedric Watson(フィドル)、James McAdams(ギター)、Christine Balfa(トライアングル)による、 ランチタイム・プレイがあった。 クレオール・チューンで進めて行く。 粋だね。

 Cedric は、Houston 近郊に住む若いクレオール・フィドルのプレイヤー。 若いクレオールの子たちはクレオール音楽を殆ど聴かない。 なので、ザディコでは使われないフィドルを弾く若い子も滅多に居ない。 Cedric 以外では、アコーディオンの Dexter Ardoin がちょっと弾くというのを知っているくらい。 クレオール音楽のフィドル弾きは亡くなってしまった人も多いし、大体がお年寄りなので彼らは貴重なのだ。

 そうしてると、Paul Scott 氏がやってきた。 彼は Zydeco Festival のオルガナイザーの一人で、とても良い人なのだ。 3 週間前に Housotn 近郊の Zydeco Jamm Festival でも会った所だった。 ついこないだ、Geno Delafose の所から独立した Curley Taylor のデビューなども手がけ、半分 Curley のマネージャーもどきもやっているらしい。 今日は午前中のクッキング・デモンストレーションの講師をしていたけど、この後はもう帰ってしまうとか。 San Antonio の Conjunto Festival にも行きたい、と常に言うてはるのだが、なかなか実現しない。 Curley Taylor のデビュー・コンサートの話とか、Geno の新しいドラマーとか、色々話は尽きないけど、 午後のクラスが始まるので、私も行かねば。


 午後 1 時 40 分頃、これも湖のほとりのパビリオン 5 で、またまた Jimmy Breaux の Accordion Repertoire。 これは参加者のリクエストで、Jimmy が色んな曲を演って見せてくれるというもの。 それも、普通の速度と、ゆっくりの2回ずつである。 私はすかさず、Scott Playboys Special をリクエスト。 確かに思ったより単音を多用してるなあ。

 このパビリオンは、水の上でなく、ほとりに建っているので水のレベルと近い。 Jimmy が演奏しているすぐ後ろをボートに乗った人が通って行く。 ケイジャン・アコーディオンを聴きながらこの雰囲気は最高だった。

 色々な曲を演りながら、合間に各人質問もしていく。 ベースボタンについての質問があった。 ベースボタンは、2 個しかついてなくて、押し弾きで 4 音しか出ないので、メロディに合わない事もある。 (実際に合わないのを弾いてみる)
けど、その合わない所だけベースボタンを弾かないとリズムを崩すから無視して弾いた方が良いとの事でした。 ここで Jimmy が言ってたのだが、ベースボタンが 4 つあるケイジャン・アコーディオンがあるらしい。 Falcon の 6 ストップの事ですか?と聞いてみたけど、それではないみたい。 これは一度見てみなくては。

 さすがの Jimmy でも、ゆっくり弾いたり単音で弾いたりするのは難しいらしい。 たまにとちっている。(とちるのも見るのも、なかなかないので面白いが)
普段やらない事だろうから、それも納得。 彼は、頭で考えて弾くタイプではない、絶対。 体全体で感じて、音に漂いながら自分の音を乗せて行く感じというか。 ステージでも良く目をつぶって弾いているのだけど、あの時はきっとそういう風に体で感じているんだろうな。

 他の質問者も言ってたが、Jimmy はそれ程蛇腹を強く押し引きしない。 つまり、パワー・プレイのタイプではない。(勿論、しようと思えば出来るでしょうが)
実際、音もそれ程大きくない。 前に彼のソロを見た事があるのだが、途中で飛び入りしたアコ弾きの方が音が大きかった。 バンドの中に、自分の音を埋める感じである。 なので、「俺が、俺が」というタイプではない。 かなり前になるけど、「僕はフロント・マンになる気はない」と、アコーディオン・プレイヤーには珍しい発言も聞 いた事がある。

 クラスが終わってから Jimmy に、違ったアコーディオン・プレイヤーの乗りのタイミングについて質問する。

Atsuko 「あのね、あなたの先乗りアコ、あれはなんでああなったの?」
Jimmy 「僕、長い事ドラム演ってたから、タイミングについていつも考えるようになったからかなあ」

 彼は今でも、BeauSoleil のギグがない時、色々なバンドのドラムを引き受けている。

Atsuko 「いつも思うのは、あなたって先乗りでしょ、で、BeauSoleil の前のアコ弾き、Errol Verret(ヴェレー) は後ろに引くタイプですよね」
Jimmy 「そう、彼はそうやね」
Atsuko 「あなたが前に(2年前の Festivals Acadiens)Traiteurs に飛び入りしたとき、 とても面白かった。Errol の後で、あなたが弾いて、乗りが全く変わったもん」
Jimmy 「そうやね」
Atsuko 「で、その後飛び入りした Roddie Romero は、ちょうどあなたと Errol の中間、 オン・タイムな弾き方やよね?」
Jimmy 「そう、彼はそうやよ」
Atsuko 「あ、けどね、(BeauSoleil のドラマー)Tommy Alesi は、後ろに引いてない?」
Jimmy 「そうそう、彼は後ろに引いてるね」

 こういって、いつも思ってる事を確認出来るのも、こういうイベントの良いところ。 実はドラマーの Tommy の後ろ引きは、Jimmy と話してる瞬間に気づいたんだが。

 一口にケイジャン・バンド、ザディコ・バンドと言うても、バンドごとにそれぞれグルーヴが違う。 例えば BeauSoleil と Steve Riley では、リズムの乗りが完全に違うし、Chris Ardoin と Geno Delafose も完全に違う。

 午後 3 時に、Dirk Powell(Balfa Toujours)による、Old Time Accordion のレクチャーを聞きに、パビリオン 1 に戻る。 説明とデモだけで、少し眠くなってきたし、Michael Doucet と Mitch Reed による、Dennis McGee Style Twin Fiddle のレクチャーも見たいので、 途中で抜けて行こう、と思っていた。 そうしたら・・・Dirk が「皆もアコーディオン出して、弾いてみよう」と言う事になり、私もアコを出す。 Dirk が簡単なフレーズをゆっくり説明しながら弾いて行く。 をを、なるほど、こりゃオールド・スタイルに聞こえるな。 ケイジャンだけでなく、クレオールでもこういう感じである。 この二つの音楽スタイルが相当近い所にあったのを体感できる、という感じだった。


 Dirk は、もともとブルーグラスの人で、かなりの楽器をこなすマルチ・プレイヤーでもある。 色々なアコーディオン・スタイルを研究しているようで、教え方も上手い。 というか、色々分解して説明出来る人なんだな。 アコーディオン教則ヴィデオも出しているのだが、DVD になるまで待っている私は持っていない。 本人に聞くと、そのうち DVD になるはずだとの事なので早くならないかな。


 David Doucet もこのクラスに遊びに来て、アコーディオンを弾いてみていた。 なかなか良いレクチャーでありました。 やっぱり、オールド・スタイルも一度は通らないといけないな、と思う。 平行してやって行こう。


 午後 4 時過ぎ、Conference Center に行く。 外に Al Berard がいて、誰かとフィドルを弾いている。 この人は本当に良いフィドラーだなあと思う。 センチメンタルなフィドルと歌のタイプでは、ケイジャン界で一番好きかも知れない。 今回の Heritage Weekend は、あちこちで本当に好きな人が演奏している。 講師陣が私のツボに嵌まる人選、という事なんだけど。


 Larry Miller ブースで、少し弾かせてもらったあと、Centerの中へ。 中では、今日の Master Session の Preston Frank がもう演奏していた。 実は今回、フィドルに Ed Poullard が講師として来る予定で、Preston のこれでも共演のはずだったのに、 Ed は来なかった(理由は不明)なのでまた、Kevin Wimmer がフィドル。Blake Castille 司会。

 さて、ここで Blake さんが「明日から夏時間です、時計を進めておいて下さいね、お間違いのないように」とアナウンス。 ぎょえ〜!!全く忘れてたああ。 と言う事は、夜中に一時間進むので、睡眠時間が一時間短くなるんです。 この状況でこれは拷問だあああ。

 午後 5 時過ぎ、列の始めの方に並んで、キッチンが開くのを待ち、少しだけのご飯をさっさと済ませ、デザートのブレッド・プリンを食べつつ、 BeauSoleil Trio が始まるのを待つ。

 これは、Michael Doucet のフィドル、David Doucet のアコースティック・ギターと Jimmy Breaux のアコーディオン 3 人だけでの アコースティック・セットをディナーの時間に演奏する、という大変贅沢なもの。 各自のソロや、メンバー不完全というのは今まであったけど、3 人だけ、というのは考えたら初めて。

 演奏が始まったが、3 人だけでも完璧に BeauSoleil の乗り。 ドラムとベース・パーカッションがないのが全く気にならない。 というか、バンドとしてやるより、もっとタイトかも知れない。 各楽器ががっちり噛み合って、ぶっといグルーヴが出て、凄い乗り。 決してお互いを殺し会わず、一人がソロになると、他の二人は一番効果的、と思われるバックをつける。 これはやはり、長年一緒に演っているチームワークのなせる業、としか言いようが無い。 このメンバーになってから、もう 15 年くらいたっている。 演奏してる本人たちも、3 人だからか、タイトな演奏を楽しんでいるのが伝わって来る。 がーーーっ!と盛り上がった瞬間は、本人達も見ている人も同じように盛り上がっていた。



 前で写真を撮りながら、曲とアコーディオンのキーのメモをとる。 アコーディオンは C と D で、普段使う 3 ローはなし。
曲も書いておこうっと。

Happy One Step( C )
Chanson pour Tommy ( D )
Reno Waltz( C )
Varise ( D )
曲名わからず( D )
Travailler C'est Trop Dur(メモし損ね、多分 C )
La Terre de mon Grandpere ( C )
Courir avec Walker( D )
Freeman’s Zydeco( C )
Poor Hobo( D )
J’ai Ete au Bal( D )
( 内 )はアコーディオンのキー

 Courir avec Walker は、Laurence Walker のメドレーでインストなんだけど、かなり盛り上がった。 個人的には、同じく Lawrence Walker の Reno Waltz が好きなんで、それを演って嬉しかった。

 BeauSoleil は、多分、今のところ一番名前が通ったケイジャン・バンドと思う。 しかし、ステージでは淡々と演奏するし、その演奏がかなり心地よいので、あまり凄い事をしているように聴こえな い人が多いらしい。 今回、この 3 人でのプレイを聴いて、初めて「凄いバンドだったんだ」と気づいた人も多かったみたい。 キャビン同室のフィドル弾きさんと後で話しても、同じ事を言っていた。 いつもステージ前方にへばりついて、鼻血出そうになりながら聴いてる私としては、全くもったいないーと思う。

 Michael は素晴らしいフィドラーの上に、とても良いオリジナルを書くし、David はバンドの推進力に なっているようなギターを弾く。 Jimmy はソロのプレイもだけど、人のバックに回ったときのバッキングの付け方が絶妙なんだな、この人。 このバンド、ソングリストは作らず、Michael がどんどん演っていったり、 メンバーと相談したり、お客さんからリクエストも受けるんだけど、そういう所も好き。 一体、何曲くらいレパートリーがあるんだろう?

 良い事ばっかり書いたけど、そんな BeauSoleil も、見る日によっては乗ってないなと言う時もある。 お客さんが変なリクエストする事もあるし(笑)。 勿論、いつも水準の演奏はするんだけど、その上での出来不出来がある。 そういう意味では、Steve Riley などの方が、毎回安定したステージをする、といえば言えると思う。 BeauSoleil は音楽、特にライブは水物である、という見本のようなバンドと言えるかも?

 この後、Breaux Bridge の La Pousiere(プジァー)ケイジャン・ナイトクラブへ Walter Mouton を見に行く。 ここは老舗なんだが、土曜の夜しかライブやってなくて、土曜の夜に南西ルイジアナに居るとザディコかフェスを 見に行く私は、いつも行きそびれていた。

 今夜はバスで行くと、深夜まで帰って来られないので自分の車で行く事にする。 カズコさんも同乗された。 ゆっくり目にキャンプを出たので、バスはもう出てしまっていたけど、Levee を走っていると、ずっと前の方にバスが見えた。 あー、あの後ろ走っていけばいいよね、と思ってたのだが・・・途中で見失った。 んー、おかしいなあ?と思ってると、Levee を運転する時間も長すぎる気がしてきた。 それが確信に代わったとき、やっと左に出る道があったが、これは違う道だ。 途中で車を停めて、地図を確認した。 どっちにしても、遠回りにはなるけど、St.Martinville には出るので、心配はしていなかったが。 カズコさんと「皆にタヌキにばかされたと言おう、けど、これってどう説明すればいいんだろうねえ?」と冗談を言い合う。

 そんなハプニングの道中だけど、Marce Lacouture の CD をカズコさんに聴いてもらいながら行ったら、 とても気に入られたと。 今回、Conference Center で売ってますよと言うと「明日買います」と。 Marce、また売ったよ(笑)。 けど、この La Joie Caddiene は、とっても良いCDなんだから。 ( www.whatbayou.com で売ってます) カズコさんは Sonny Landreth の事はご存知なかったけど、Sonny がプロデュースした素晴らしい CD で、 彼のギターもかなり効果的に使われている。


 Breaux Bridge に着いてコンビニで氷を買った後、La Pousiere に行く。 中は、想像してたより奇麗で広かった。 出演者にもよるけど、こういうクラブは年配の人が多い。 ちょっと年配の夫婦が、週末に踊りに来る感じと言えば良いだろうか。 ダンスフロアが特に丁寧に作って有って、とても踊り易い。

 一緒にアコーディオン・クラスを取っていたカナダのおじさんがいた。 座って少し話してたんだけど、彼はカナダ航空のパイロットとか。 この半年ほど、File(フィレー)のアコーディオン弾きを探してるんだが、見つからないという。 そのアコ弾き、金曜、Preston Frank 見に来てましたよ、というと「えっ?」って。 File は実は解散してるのも、ご存知なかった。 今は Blake Castille と、Lucky Playboys ってのをやってますよ。


 それから少しすると、なんと!そのアコ弾き本人の Ward Lormand が入り口から入ってきた。 Ward に声をかけ、カナダさんの事を説明して紹介。 カナダさんは、半年探していたアコ弾きと、こんな形で合うので、びっくりなさってたようだ。 色々質問されていた。

 Walter Mouton はもう、60 代だと思うんだけど、彼のアコーディオンって古臭くない。 色々な人がお気に入りに挙げるのが解る。 バンドは典型的なオールドタイムのケイジャンだけど。 アコーディオンにフィドル、ペダル・スティール・ギター、ベースとギターはアコースティックでなく、エレキですが。 フィドルは Jimmy Breaux の義父、U.J.Meaux で、お元気そう。 Jimmy は、この Walter の回りで育った訳なんだなあと思う。

 カナダさんに言われて気づいたのだけど、ペダル・スティール・ギターが Jr.Martin だった。 彼はザリガニの蛇腹で有名な Martin のアコーディオン・ビルダー( Yoshitake さんの 9 月のレポート参照)だが、 もともとペダル・スティールのプレイヤー。

 こういうクラブでカズコさんと私、日本人が二人居るとやはり珍しいようで色々声をかけて来る人が居る。 ここに来る人はそりゃ、私がケイジャン音楽 10 何年聞いてて、アコーディオン習ってるなんて思いもしないわなあ 。

 私は半分無視していたけど、カズコさんは丁寧に相手をしてはった。 今はいつの時代?と思うような、派手なシャツにもみ上げオジサンが「踊り方知ってるかぁ?」と聞いて来るので、 少し踊ったけど「ワシはホンマはロックンロールやからなぁ!」と何回も念を押すので笑ってしまった。 20 年前のスワンプ・ポップのジャケットに写ってそうなオジサンだった。

 一時間半程いて、明日もあるので帰ろうと言う事になる。 帰りしな、入り口でカヴァー・チャージを集めてるおばさんに

Atsuko 「とっても楽しいけど、門限があるから帰らないといけないんですぅ」と冗談を言うと
おばさん 「え!!?今から日本に運転して帰るの?」

カズコさんとふたりで、ずっこけて大笑いになった。 この話、その後帰ってから皆にして、受けた。

 帰り道もカズコさんと話が弾んだ。 BeauSoleil の乗りについては彼女「ジャズのインプロビゼーションに似てますね、彼ら、とっても自由ですね」と。 成る程、そうですね。 St.Martinville に近づいた時、ダンナから携帯に電話が入る。 あー、すまない、電話しそびれてた。 というか、Lake Fausse は携帯の電波が届かない所が多いのだ。

 帰りは迷う事も無くキャンプ場に帰り着いたのだが・・・・ゲートが閉まってるやんけ〜!! うわぁ、どないしょ? コンビネーションで開く鍵がついているけど、番号知らないよー、と焦ったところで、昨日、 バスの中で Jim がこの番号の話をしていたのを思い出した。 Jim の携帯にかけてみるが、やはり電波が届かない。 まいったなー、こりゃ、バスが帰って来るまで待つしかないのか・・・と思ったところで、
「来た時にもらった駐車許可の紙に書いてあるかも知れませんよ」とカズコさんが助け船を出してくれた。 紙を見ると・・・ありました、番号。 無事にゲートが開いて、中に入る事が出来た。 で、落ち着いて考えると、この番号はある年号なので、もしもどうしようもなかったら試してみよう、と思っていた 番号だったのだ。

 後で聞いたところによると、私たちより先に帰ったカナダさんは番号を見つけられずに、誰かが来るで待っていたらしい。

 Conference Center に寄ってみたけど、あまりセッションも盛り上がっていない感じなので、明日に備えてキャビンに戻る。 途中、カズコさんに「ルイジアナに音楽が目的で住み着く日本人って、90 何パーセントかは関西人なんですよ」という話をすると、

Kazuko 「解ります、それ。確かに、この辺は関東の文化圏じゃないですよ」
Atsuko 「関西の人と、この辺って違和感ないところがあるんですよね」

これは去年の秋、Festivals Acadiens で一日半ご一緒した、New Orleans 在住の宇田川さんもおっしゃってた。 いつも疑問に感じている事を、初めて知り合った人に話して同意してもらえると、確信に代わって来るなーと思った。

 あー、それにしても、今日はめちゃくちゃ濃い一日だった。


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