9/18 (Thu) 谷口敦子クロスレポート

 私の住んでいる Texas の San Antonio から Lafayette までは、車で6〜7時間かかる。 ちょうど真ん中に Houston があり、ここの停滞の程度で運転時間が30分は変わる。 なので、いつも朝9時ごろ家を出て、お昼休みの時間帯に抜けるようにしている。 しかし、今回は大雨。 結局、Houston の手前まで雨で、制限速度以下で走って、疲れた。

 Houston を過ぎると、州境まではまだだけど、景色が Louisiana になる。 松の木が生えていて、田んぼがあって・・・土地が本当に平らで。 Louisiana の州境を超える前に、一回給油して、あとは一路 Lafyette へ。 その途中、Lake Charles を通るのだけど、ここに来るといつも Boozoo Chavis の事を考えて、ちょっと切なくなる。 湖にかかる、高くて大きい橋から、Boozoo の家の方に行く道が見える。

 Lake Charles を過ぎたあたりから、この時期の Louisiana 恒例の虫、Love Bug で、フロントガラスが「わや」になる。 ぐちゃぐちゃに張り付いて、前が見えへんんん!! ワイパーかけると、もっと悲惨な事に・・・

 Lafayette に着いたら、4時半くらいになっていた。 宿を提供してくださったじろうさんの帰りを待ち、再会の短い挨拶もそこそこに、今夜のライブに行く準備。

 今回無理して早めに来たのは、ダウンタウンである Helth Care for Musicians という催しに、Sonny Landreth のケイジャン・プロジェクトの The Traiteurs(トレィトゥアーズ) が出るから。 じろうさんは、ULLの夜のクラスがあるので、それが終わったら会場にということで。

 会場は Cite Des Arts という、3rd と Vine の角にある建物のあたりでの野外ブロック・パーティーらしいので、そのあたりに行って、駐車場を探す。 ダウンタウンは駐車がしにくいのは、ここ Lafayette も同じ、駐禁も貼られやすい。 会場のブロックを過ぎるとお馴染みの Grant Street Dancehall だった。 そのあたりで駐車スペースを探していると、Traiteurs のアコーディオン弾き、Errol Verret が居たので、「あ」と思っていると、Sonny Landreth も車に乗ってやってきた。

 車から Sonny に手を振ると、気づいてくれた。
「いやー、あんたは、どっからでも飛び出て来るんやねえ」
と笑ってはりました。彼はいつも暖かい Hug をくれる。
「ずっとツアーで忙しかったみたいですねー」
「そうやねん、こないだ帰ってきたとこ」
来月の John Hiatt は Sonny がバックなのかどうかサイトに書いてなかったので、確認。 その他、12月にも Austin で演る予定とか・・・ ついさっき Lafayette に着いた事を話すと、私のジープのフロントガラスに張り付いた Love Bug の残骸を見て「いやー、ホンマに運転してきた!って感じやねー」 そんなこんなを話しながら、会場まで歩いていく。

 演奏はもう始まっていて、演っているのは Wine Alley Blues Band というのだけど、Sonny によると、これはギタリスト Bobby Broussard のバンドらしい。 Bobby は前に Geno Delafose の所にいた時に良く話してたので、知ってまっせー・・・と。(その前は Chris Ardoin の所にもいた) ステージの上ではその Bobby がギターを弾いている。 名前の通り、ブルースだ。

 演奏の合間にMCをやってる人がいて、Sonny が「あれ、Tony Daigle の奥さん」
「Tony Daigle って、どの人か良く知らないんです」
「え?まだ紹介してなかった?」
「まだです、South Of I−10 のブックレットに写ってますよね?」
「写ってるよ」
「けど、どれかわからない」
「次に一緒に居る機会があったら、紹介してあげる」
「是非」
Tony Daigle は、南西ルイジアナ関係のレコーディングでは、主要人物なのだー。

 Traieurs のベース、Gary Newman にも会い、挨拶して少し話す。 (この人は、スワンプ・ポップのスター、Jimmy C Newman の息子さん) Sonny は Marce Lacouture も来てるよ、って。 Sonny が他の人と喋りに行った頃、Todd Mouton がいたので、挨拶しにいく。 Todd はいつも、12月の Medicine Show で司会してる人です。(ネット放送あり) それ以外にも、知り合いの山で、会う人ごとに話が尽きない。

 Cite Des Arts というのは、小さい劇場で、その前の通りをまるまる閉鎖して、ブロック・パーティーにしていた。 中に Marce Lacouture がいたので、挨拶するが、彼女は今日はお手伝いしてるようで、忙しそう。 あとでステージでMCもしてたけど、いつもながら、可愛らしい人です。

 Traiteurs のフィドル&歌を担当の Al Berard もいたので、Traiteurs ではリクエスト受け付けるのかどうか聞いてみた。 何が聞きたいの、というので、Lawrence Walker の Tits Yeaux Noirs と Reno Waltz、それと Dennis McGee の Two Step De Ville Platte をリクエストしてみた。

 そうこうしているうちに、Traiteurs の出番になる。 いつもお馴染みの Traiteurs 節が始まると、気持ちよいー。 雨の中運転して、無理して木曜に来た甲斐があった、と思う。

 私がこのバンドをいつも見に行くのは、Sonny Landreth もひとつの理由ではあるけど、ここのフィドラー、Al Berard がとても好きだからなのだー。 彼は、センチメンタルな曲を演らせて歌わせたら、ケイジャン・フィドラーの中では一番好きかも知れない。 で、もう一つの大きな理由は、アコーディオンの Errol Verret。 彼は80年代に BeauSoleil に居た、ちょっと後ろ乗りの、とてもエレガントなアコーディオンを弾く人で、好きなのだー。 Al と Errol は今までに、2枚くらいCDで共演しているけど、Errol は現在、レギュラーで演奏はしてなくて、この Traiteurs くらいでしか見られない。 その上に Sonny のギターが乗ってるのだから、見に行かない訳には行かない。 この Traiteurs というのは、基本的に基金集めの為のバンドで、普通にクラブに出たりはしない。 今回は土曜の Festivals Acadiens の方にも出るのだけど、やっぱり両方見ておかないと。

 メンバーは、この3人を中心に、ドラマーの Danny Kimball、ベースの Gary Newman、アコースティック・ギターの Tony Latiois、トライアングルで Valerie Berizaire というのがレギュラー。 毎回飛び入りはあり。

 数曲目で、授業に出てはったじろうさんが来てないかどうか、後ろの方に見に行くと、あー、Sam Broussard と Dave Ranson が話してるー。 (Sam は Steve Riley のギター弾き、Dave は Sonny Landreth のベース弾き) をを、来てるやんけ〜、と思ってると、先に Dave に気づかれて、やあやあになる。 Dave の奥さんも来てて、相変わらず素敵なルイジアナ訛りで喋られます。

 Sam Broussard は、いつもの甲高い声で「あつこぉぉ〜」とBig Hug をくれる。 (この人は、私の名前をちゃんと発音できる、希少な人でもある) 彼とは、乗っけからバカ話になる。
「今回は何処でもあなたのソロやらんの?Steve Riley だけでしか出ないの?昨日も Bluemoon に出なかったよね?」
「僕が演ってる時に、あんたが来ないからあかんのや」
(そんなに簡単に来られるかいいい)
「ああ・・来る前に電話しようと思ったんやけど、ばたばたばたばたしてて、しそびれた」
「ああ、許したげる」
(別に許してくれんでええが)
「Steve(Riley)ねえ、先週か・・・その前の週に、赤ちゃんできたんや」
「ええ?ほんまぁ」
「ああ、Steve が妊娠したんやなくて、彼女が産んだんやけど」
「そらそうや、(Steve が妊娠した)そんなん、見とうない・・・ところで彼、落ち着くの?」
「さあ?誰も知らん」
「あ・・・いや、そんなんどっちでもええけど、私は別に知りとうないわ」
「え?知りたい事あったら、何でも教えたげるで、僕の女性遍歴とか、何でも」
「要らん」
「ミュージシャンは彼女に対して、とても不誠実やからなあ」
「あはははは・・・」(力ない笑い)

 このあたりで、タイミング良くじろうさん登場。 そんでもって、Tits Yeaux Noirs が「リクエストです」と言って始まった。 わああああ、これ、リクエストしたのーと騒ぐ。 Sam が「この曲、好きなんか?」というから、そーだというと、「これ、テネシー・ワルツやんか」と歌い出す。 その一言で、この曲が笑い話になってしまったぞ・・・

 ステージでは、Zachary Richard が飛び入りで歌ってる。 最近 Traiteurs を見ると、漏れなく Zachary が付いてます。

 次は黒人の女の人が Jole Blonde を歌い出す。 そばに居た Todd Mouton に、あれ誰ですか?って聞くと、Carol Flan(あれ?Fran やったっけ?)だった。 そうかな、とは思ったんやけどね。 彼女、終わってからフランス語でMCやってた。

 この Health Care for Musicians というのは、健康保険のないミュージシャンをサポートしよう、という活動らしくて、出演者以外にも、色んなミュージシャンがお手伝いや、単に遊びにやってきていた。 Balfa Toujours の Christine Balfa がステージにあがって、彼女がジャンバラヤを売ってるから、買いに来てくださいと言っている。 Christine は今、2人目を妊娠中で、来週、男の子か女の子かわかるらしい。 妊娠の事を話すとき、とっても嬉しそうだった。 幸せなのね、私も嬉しいです。

 Terrance Simien も見に来ていたが、彼、一時よりはちょっと痩せた感じ。 数年前は横に転がす方が早かったもんな〜。

 終わってからも、色んな人と話す。 Traiteurs のドラマー、Danny Kimball に、去年の12月にメールアドレス渡して、用事を頼んでおいたのに、音沙汰がなかったので、首を絞める(嘘)。 いや、覚えてくれてたので、まあ良かったのですが。

 Sam Broussard が Sonny Landreth に話しに行ってたので、じろうさんと3人写真を撮ってあげる。
Sam が笑いながら、Sonny を指して「さっさと撮ってや、僕ら、ホンマは仲悪いから」 そうか。 じろうさんは、この2人の大ファンなのです。 私もですけど。

 先に出演していた Bobby Broussard が、3ローのアコーディオンを持っていたので、「アコーディオンも弾くの?」と聞く。
「ちょっと弾くよ、これ、Roy Carrier から買うたの、Roy 知ってるよね?」
「ええ、Chubby Carrier のお父さんでしょ、これ、リード何枚入ってるの?」
「知らん、けど、ええ音してるで」と弾いていた。
Louisiana のミュージシャンって、複数の楽器が出来る人が本当に多い。

 会場の片づけをお手伝いしている友人を待って、話しているうちに、Sonny は帰ったみたいだけど、Sam はまだ知り合いと話していたので、そこに加わる。
「アツコはホンマは子どももいてないし、結婚もしてないんやろ、ダンナも子どもも、どっちも見た事ないもん」
「ほんまにおるでー、前に(T−Mamou で)Medina Lake に来たとき、おったでしょうが」
「覚えてない」
「そうか」
「ほんなら、アツコが離婚したら、僕の次の奥さんになるの」
(人前でそんな事言わんでもええがなああああ!、と思いつつ)
「えー・・・もっと若いのと一緒になったらあかんの?」
Sam はマジでのけぞっていた。
「なんで私に振って来るのー、ルイジアナにもナイスな女の人、一杯いてるやん」
「そうやな、いっぱいいてるな・・・・そうや、僕、ナイスな女の子好きやないんや」
「ん・・・!!!せやから私に来るんかい!!!」
「アツコはヒドイ事言うもん、僕は年寄りで、不細工で・・・」
「ブサイクとは言うてない」
「いや、言うた」
もうええって。 このあともバカ話は続くが、割愛。

 駐車場に歩いていって、別れる前に
「ほならまた」
「明日やね、来るよね?」(Grant Street Dancehall の Steve Riley)
「あーー、そうやね・・・行かなあかんね」
内心、El Sido’s の Step Rideau とどっちにしようか迷っているので、歯切れの悪い返事である、ははは。

 一日目から、とても沢山の人に会い、色々話もして、充実しまくりでした。

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