−初日− Bourbon St.


 現地日時 1997.11.6(木) pm5:00

 ニューオリンズ空港の外へ出る。かなり寒いな。 Tシャツ+長袖シャツだったが上着が必要だ。多分、気温20度以下だと思う。とりあ えず、これから泊まるホテル「Hotel La Salle」が存在するダウンタウンのフレンチ クォーターと呼ばれる地域に向かう。普通は空港シャトルバス($10.00)か タクシー ($21.00)を利用するらしいが、地元人が使う普通のバス($1.50)で行く事にする。 BUS STOPらしき場所は判ったんだけど時刻表・行き先等がまったく記されてないので、 ベンチに腰掛けて世間している2人の黒人のオバサンの片方に福田氏が声を掛けてみ る。まあ、なんとなく「フレンチクォーターまで行くよ/$1.50きっかり持ってない とお釣りは無いよ/此処で待ってりゃいいよ」という様な事が聞き取れたので良かっ たが、福田氏曰く、どこまでが隣のオバサンとの世間話なのか、どこまでが独り言な のかがよく判らなかったらしい。

 30分程寒い中待っていたらようやくバスが来た。運転手は白人男性で、かなり親切 な感じがした。空港からアップタウンを抜け、ダウンタウンへ進む。徐々に今日も仕 事に疲れたと思われる黒人達が乗り込んで来て僕等以外の20人程は全員ブラックにな る瞬間もあり、かなり緊張してしまった。しかし、不思議に思ったのは乗って来る黒 人と既に乗っている黒人どうしがお互いに右手でコブシをコツンとぶつけて挨拶をし ていたが、皆が顔見知りなのか? それとも単に知らなくても黒人同志皆兄弟だとい う事なのか? いずれにせよ僕等には右手を出して試してみる勇気などサラサラ無い。

 45分程で終点のエルク・プレイスに到着。此処から僕等の泊まるホテルは1ブロッ ク隣のはずだ。(1ブロックは約100〜200m程) しかし、もう日は暮れてあたりはちょっと 暗い。小走りでホテルを探す。隣の劇場の看板のネオンとファーストフード店に挟ま れていてちょっと判り辛かったが、難なくチェックインを済ませた。ツイン一部屋一 泊は$73? たしか$6?じゃなかったっけ? そうそう、此処は消費税9%だったな。 しかし、9%というのは高いし計算しずらいぞ。

La Salleロビー  部屋は220号室、黒人のポーターがたいして重く無い手荷物二つを部屋まで運ん でくれた。チップ$2渡す。部屋はたいして良くない。天井の一部の板がずれているし、 シャワーもガタがきている。でも清潔ではあると思うので良しとしよう。やはりフレ ンチクォーター内ならどんなレベルのホテルでも観光客が来るんだろうなぁ。

 とりあえずベットに腰を落ちつけ、一服。禁煙エリアが多かったな。テレビの写り 悪し。窓から路上を見ると、やはり黒人達がたむろしている。というのは目の前にバ スや路面電車の停留所があり、ホテルの出入口横には黒人御用達のファーストフード 店があるからだ。

 そろそろ出掛けよう。手ぶらでキャップを深く被り、必要と思われる額の金を持ち、 それとは別に胸ポケットに$20札を入れた。というのは昔何かのテレビ番組で 北野武 が言っていたんだが、アメリカでホールドアップされた時に渡す金額は $20が最適だ そうだ。それ以下では身に付けている物も取られてしまうし、それ以上、例えば$100 も出してしまうと逆に相手はビビって殺しとかなくちゃならないと思ってしまうらしい。

 ホテルのロビーに下りて出入口まで行くとソファーにふんぞり返っている先程の黒 人ポーターが別に焦りもせずゆっくりと立ち上がり、黙ってドアを開けてくれる。

 とりあえず、繁華街として有名なバーボンストリートに行ってみる事にする。こ の通りはダウンタウンを縦に真っ二つに区切るカナルストリートから右に真横に通 っていて一晩中華やかな通りだ。フレンチクォーターと呼ばれる区域はこのカナル・ ストリートの右側でルイ・アームストロング公園が面しているノースランパートス トリートからミシシッピ川までを指す。(普通のダウンタウンの地図で見ると右下半 分を占める) ちなみに日本のガイドブックには、夜になったらバーボンストリート より北へは危ないので行かない事! などと書いてあるけど、僕等のホテルはバーボ ンストリートから北へ3ブロック程行った所なんだよなぁ。

Louis Armstrong リバース
ルイ・アームストロングの銅像にて リバース・ブラスバンド(1984)

 無言で僕等はカナルストリートを黒人さんに肩が当たらない様に南下してバーボ ンストリートの入口にたどり着く。途中、寂れた裏路地が幾つかあったがやはりこ の通りは明るくて騒がしい! 軒を並べている店々(主にバー、ストリップ)から音楽が 溢れている。殆どの店が窓や出入り口を開けっ広げているので、店に入らなくても歩 いているだけで楽しめる。とりあえず、腹が減っているのでガンボかジャンバラヤを 食おうと思ったが、安くて旨いレストランは何処も長蛇の列。しかたなくちょっと上 品で高そうなレストランに入ってしまった。残念ながらジャンバラヤは無いらしいの で色々セットになっている”テイスト・オブ・ニューオリンズ”という様なセットとハイ ネケンを注文する。出てきたものはガンボとビーンズ・ライスが1カップずつとトマト ソースの上にバターライスらしき物がのっかってる代物だ。福田氏はよせばいいのに パスタらしきモノを注文していた。?????こんなものか? たいして旨くないな。 しかし、この疑問は明日に吹き飛ばされる事になるのだ。

 味に府に落ちないまま、チップを含め $41をテーブルに置いてその店を後にすると 僕等が置いた金を手に握り締めて店員の若造が追っ掛けてくるではないか! 何だと 思い、話を聞くと「金が足りない」と言う。目の前で数え直してみると、食事代 $37 とチップ一割で$4、しめて$41あるじゃないか。どうやらその店員は$10札二枚と$20 札一枚を$10札三枚かと勘違いしてしまった様だ。店員も走って追っかけて来た手前、 かなりバツが悪かったらしく、「Sorry」と小声で言って店に引っ込んでしまった。 「金が無さそうだからって失礼な!」と福田氏、怒る。(店員が居なくなってから)

R&Bナプキン  このままバーボンストリートをブラついていても音楽は十分楽しめるのだが、い くらジャズとブルースの街とは言え観光客(主にアメリカ全土の白人を指す)相手に ダサダサのカントリーやヒップホップをやっている店も多いのだ。そんな中で一番濃 そうなブルースをやっていた”R&B”(そのまんまじゃないか!)というバーに腰を落ち つける事にした。

 店に入るとすぐに白人のオバチャンがテーブルへ案内してくれた。此処でも灰皿は 頼まないと出てこない。チャージは無し。$2.50程のビールを2本飲んだ。これで生 演奏を真近で楽しめるんだから安いもんだ。しかし、ビールが切れそうになるとオバ チャンが早速と飛んできて追加オーダーを取る。飲み過ぎに注意。そういえば福田氏 の吸っていたマイルドセブンが珍しかったらしく、一本貰っていたなぁ。出演してい るバンドはE.G.&Vo.とDr.とB.の黒人トリオだ。顔・歌い方・ギター共にバディ・ガイ を意識しているんだと思う。なかなか良い感じ。

 ちょっと眠くなったのでバーボンストリートの端から端まで一通り見て良さそう な店をチェックしてからホテル戻る事にした。全体の店の数からすると僕等が求めて いる黒人達のディープなジャズ&ブルースをやっている店はあんがい少ない事に気付 く。どちらかというと白人観光客向けのソフトな趣向の店が多い。

 バーボン・ストリートの夜は黒人達が歌い、演奏して、白人達がそれに金を出すと いう図式が徹底されている様に思う。たぶんその黒人達も白人達にうけるなら、こん な曲もやらなくちゃならねえな、と割り切っている部分があるようだ。(生きていか なければという深刻な問題を抱えているので仕方ないと思うが)

 しかし、この「ニューオリンズもただの観光地と化してしてしまったのか?!」と いった一抹の不安も前記にあるレストランでの疑問同様に、明日以降に行ったバーボ ンストリートから少し外れている幾つかのライブハウス&バーに訪れる事によって 解消されるのだ。

ホテルへの帰り道、空を見上げた。なんと、ニューオリンズの夜空は赤い!

 就寝:午前3時頃

 今日は時差を含めると1日が約39時間(24+15時間)あった訳だ。長い一日 だった。飛行機内から数えると一体、何本ビールを飲んで、何回メシを食って、何回 寝たのやら、、、。


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