−四日目− MAPLE LEAF BAR


 現地日時 1997.11.9(日) 晴れ am12:00起床

 昼食は「フェリックス」というイバー ビルストリート沿いのレストランで、ガンボとビール。福田氏はジャンバラヤとコ ーラ。さすがにコーラは飽きたと言っている。それに今回は生ではなくボイルして上 にホウレンソウクリームらしきものがかかっているカキを注文した。デザートにブレ ッドプディンを食べてみたが、甘いのなんの。見た目もグチャッとしていて強烈だ。 キツイ甘さよりもワインがかなり入っているようで福田氏にはNG。結局、僕が半分 程食べた。

デキシー  先日、マーヴァ・ライトを観た「ハウス・オブ・ブルース」にゴスペル・ブランチを観よ うという事で行ったんだが、既に長蛇の列。チケットも売り切れだった。まぁ、そん なに楽しみにはしてなかったので、気を取り直してミシシッピ川沿いのオープン・カフェ に腰を落ちつける。そこでは P. Tp. As. Drs. という編成バンドがディキシー ランドを演奏していた。ちょうど僕等はDrs.の斜め後ろの席を陣取り、本場(?) のマーチング・ドラム奏法をじっくり楽しませてもらった。昨日は変なコーヒーを注文 して甘すぎたので今日からは何処でもブラックを飲む事にした。んー、まあまあの 味だな。確かに噂に聞いていた「チコリ(キクやタンポポの仲間の葉を乾燥したもの らしい)」が入っていると思われる香りがする。でもねぇ、確かにアメリカ中ではこ のコーヒーは旨い方だと思うけど、僕は福田氏が高円寺の自宅で煎れてくれるコーヒー の方が旨いと思うよ。お世辞でなく。

 pm5:00が近づいてきたので再度エディ・ボを観に「マルガリータビル」へ行く。今日 で三度目だ。そこで、こんなに通っているんだから一緒に写真を撮らしてもらおうじ ゃないか! という事が決定。ちょっと店に早めに行き、エディ・ボを待ち伏せる事に。 まだ前の出演者が演奏中だ。もちろん、ステージ毎に入れ換えもチャージも無いので 入口付近に席を構えた。どうやらヴォーカルの黒人は盲目らしい。最後の方で歌った サム・クックの”A Change Is Gonna Come”にはしびれた。 live

 時間どうり、エディ・ボとマネージャーが現れた。僕等はかなり緊張していたが意 を決してエディ・ボに歩み寄った。

「We come from JAPAN to see you!!」

 エディ・ボの代表曲もしらないクセに堂々と言ってしまった。しかし、先日までの 演奏を直に聴いてファンになったのだから良いだろう? エディ・ボはニッコリ笑って 握手をしてくれた。写真も肩を組んでくれてバッチリ。結構小柄だ。

with Eddie Bo 1

 そしてステージが始まり、中盤で「今日は遠い日本から来てくれた君達へこの曲を プレゼントしよう」と言ってエディ・ボの代表曲の”Check Mr.Popeye”を演奏してくれ た。ごめんよ〜、本当は知らなかったんだよ〜。

 ステージが終了した時、一人の日本人が近づいてきた。ああ、あの自由が丘の「マ ルディグラ」でドラムを叩いてた彼じゃないか! 彼は気さくな感じで「どちらから いらしたんですか?」と話掛けてくれた。暫く立ち話をしたが、彼は一ヵ月程こっち にアパートを借りて住んでみるらしい。うらやましいな。奥さんも一緒。彼の話では 来週、大阪のブラック・ボトム・ブラスバンドがこっちに来てライブをやるらしい。 また自由が丘の店で会いましょうということで別れた。おっと名前聞くの忘れちゃっ た。

 店を出る前にエディ・ボにお礼を言おう。しかし、いろんな人達と歓談中でタイミ ングが難しい。で、暫く頃合いを見計らってから福田氏が「”Check Mr.Popeye”演奏 してくれて有り難う。とても嬉しいです」というような事を緊張しながら言ったとこ ろ、ちゃんと判ったらしくニコニコして「ピアノに一緒に座って写真を撮ろうか」と 言ってくれた。福田氏は僕の事を「彼もピアノ弾きだ」などと言ってくれた為、僕も 調子にのって”Tipitina”をちょろっと弾いてしまった。エディ・ボはニッコリ笑って 僕の肩を軽く叩いて頷いてくれたが、失礼ではなかっただろうか? これはプロフェッサー ロングヘアーの曲なんだけど、、、。

with Eddie Bo 2
(中央後ろは福田氏)

 意気揚々として次の目的地の「メープル・リーフ・バー」へ向かう。ここはアップタ ウンのちょっと危ない場所にあるのでタクシーで行く。店に入るとムチャクチャ怖い! 薄暗い店内にいるのは殆どが黒人である。(しかしながら、カウンターに立っている のは白人。たまたまかもしれないが、今回僕等が立ち寄った店々ではカウンターに黒 人が立っている店は無かったように思う)今夜はここでスモーキー・ジョンソン(既 に亡くなってしまった偉大なドラマー)のトリビュートライブが行われる。 僕等は目立たない様(たぶん思いっきり目立ってただろうが)静かにカウンターの隅 で店内の様子を伺っていた。スーツとでかい指輪でキメてる黒人のおじいさんが二人、 この辺りのボスなんだろうか? 次々に入ってくる黒人達は皆ドラムセットの各部を 持って来ていてフロアに組み立てていく。おっと、ジョージ・ポーター・ジュニアが普 段着で入ってきた。これは、凄い顔触れになる予感がするぞ!

 このバーは細長いハコだ。 ステージはさほど大きくなく、客のフロアがステージの幅のまま細長く延びて いる。だから一番後ろだとかなりステージから離れてしまう事になる。その細長いフ ロアに次々とドラムセット、パーカッションが組み立てられていく。一番ステージ寄 りのコンガがリズムを叩きだした。そして隣のドラムもそれに合わせて鳴り出す。二 つ、三つ、と次々にドラムが鳴り出す。しまいには総勢五、六のドラムの大合唱だ。 客はドラムセットとドラムセットの隙間に立ってニューオリンズの重たく、力強いリ ズムを全身で楽しむ。もう、これはたまらん、鳥肌が立った。あれれ、ジョージ・ポ ーター・ジュニアは出演者かと思ってたがビデオを撮ってるぞ? そんなにこの顔触れ はムチャクチャ凄いのか? 悔しいけど僕等にはほとんどが誰が誰だか判らなかった。 このドラム合戦はほぼ一時間程続いた。終了の流れも手際が良く、ステージの一番外 れの方から徐々に演奏を止めてドラムセットをサーっと片づけていく。よって、最後 まで演奏しているドラムはステージ上のドラムとなり、フロアの客はステージに目を 向ける事になる。
maple1 maple2
maple3  今夜のライブの主旨「スモーキー・ジョンソンに捧げる」といった内容の演説が終わ ると入れ代わり立ち代わり、いろんなバンドの演奏がはじまった。あるバンドでは前 回スヌークス・イーグリンが来日したときのドラマーのジェフリー”ジェリービーンズ” アレキサンダーも出てきた。後半、先日「ハウス・オブ・ブルース」でも観たマーヴァ・ ライト達が店に入ってきた。もちろんダベル・クロフォードも。何やらマーヴァ・ライト は客にビラを配っている。僕にも手渡してくれた。以外にも僕より背が低いのだが、 横から見ても上から見てもまん丸な体型だったな。ビラの内容は、癌と闘っている ジョニー・アダムス(ブルース・シンガー)を救う為の慈善コンサートのお知らせだ。 うーん、15日か、惜しくも僕等は15日には日本に帰ってしまっている。お、今度 は先日観たロッキン・デュプシー・ジュニアまでもが店に来た。そしてその三人、マー ヴァ・ライト、ダベル・クロフォード、ロッキン・デュプシー・ジュニアがステージに上 がる。ドラムは現ミーターズのラッセル・バティスト。この人のセカンド・ラインリ ズムで”HEY NOW BABY”をやられちゃったから堪らない。次にダベル・クロフォードが キーボードを弾きながら歌う。やはり、この人は毒牙を持っているようでカッコイイ。 ロッキン・デュプシー・ジュニアはキーボードにヘンリー・バトラーを迎えてジェーム ス・ブラウンの”SEX MACHINE”を歌う。そういえば昨日の日本武道館のJBのチケット 無駄にしちゃったな。また、ヘンリー・バトラーが弾くキーボードがカッコいい。若 くしてニューオリンズではかなりの大御所らしいが知らなかった。どうやらソロ名義 のアルバムはブルースと言うよりはジャズ寄りのモノらしい。

 こんな感じで多くの素晴らしいミュージシャン達の演奏をたっぷり楽しんだ。名前 を控えておきたかった人も数知れず。午前零時頃、そろそろ帰ろうかと思っていた矢 先、三人の日本人が店に入ってきた。なんか見覚えがあるなと思ったら、なんと一人 はあのワイルド・マグノリアスに正式参加した山岸潤史さんで、もう一人は高円寺 「JIROKICHI」でたまにライブをやっているゴアヘッドのヴォーカルのヒロナリ さんじゃないか! 直接面識は無かったが共通の友人が居たのでヒロナリさんに声を 掛けたら向こうもビックリしていた。彼も山岸潤史さん同様にニューオリンズのいろ んなミュージシャンのバックギターを務めているらしい。で、たまに日本に帰って来 ては高円寺「JIROKICHI」でライブをやっているそうだ。次回は来年三月との 事。山岸潤史さんはいろんな人達と大声で喋りまくっていた。パワフルな人だなぁ。 ヒロナリさんから「明晩、もし暇だったら電話ちょうだいよ」と名刺をくれた。

 僕等は店を出て、ちょっと離れた停留所で路面電車・バス・タクシーどれでもいい から待っていたがまったく来ない。路面電車・バスは24時間運行のハズだが、、。 しかたなく店に戻り、スロットで遊んでいたヒロナリさんに相談したところ、英語堪 能らしき横に居たヒロナリさんの彼女がタクシーを手配してくれた。ありがたい、事 情の判らぬ土地での親切が骨身にしみる。感謝、感謝。

 そのままバーボン・ストリートに戻り、24時間営業の「クリスタル・バーガー」でハ ンバーガーをテイクアウトしてホテルに戻る。ここのハンバーガーは一個.60〜.70ぐ らいでかなり安いが、その分小さい! 手のひらぐらいだ。店員の姉ちゃんも感じ悪 し。たどたどしい英語を喋ると、思いっきり面倒臭そうな顔をする。まぁ、24時間 世界中から来る酔っぱらいの相手してるんだから仕方ないか。

 就寝:午前3時半頃


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